調布市柴崎「modular club #5」に出演しました(使用モジュラーシンセの解説付き)
こんにちは、A Smooth Architectです。9月21日、モジュラーシンセ愛好家のライブイベント「modular club」の会場であり主催者でもある柴崎modさんからお誘いを頂き、生まれて初めてモジュラーシンセのみを使用したライブを敢行してまいりました。1年前にモジュラーシンセに取り組み始めた頃からライブを志向してセットを組んでいたとはいえ、未経験者によく声をかけていただいたな。。。と思うのですが、何とか終えることが出来ました。このコラムでは、ライブの模様を動画で紹介すると共に、モジュラーシンセに興味のある方向けに、当日の使用モジュールを解説します。
それではまず、当日の模様をダイジェスト動画でどうぞ(2つの角度から収録していただきました。撮影くださった皆様、ありがとうございました)。実際の演奏時間は20分でした。
20分で1曲だけ、というのも今回初めてライブで行った試みでした。それでは使用モジュールを解説していきましょう。今回は4ms POD64xと、POD48xという二つのケースを用意し、それぞれ「音源+シーケンサー」「エフェクト」というグループに分けてモジュールを格納しています。ではまずPOD64xに収まったモジュールを、左から順に解説していきます。
Erica Synths Pico RND
2HP Play
演奏の中盤で鳴っていた、インダストリアルなノイズ・サンプルはこの組み合わせで鳴らしています。Pico RNDはランダムCVおよびランダムゲート信号を出力するモジュールです。そして右隣りのPlayは、マイクロSDカードに収録されたサンプルを、入力トリガーもしくはマニュアルボタンで鳴らすモジュールです。Playのユニークな所は、サンプルの「選択」をCVで行えるところです。つまりサンプルの選択にPico RNDのランダムCVを、発音にランダムゲート信号を使っているというわけです。ちなみにノイズ音は、近所のビル建築現場にてiPhoneで録って来た、鉄骨を切る音です。
Michigan Synth Works nRings
鐘や太鼓の音、撥弦楽器の音を得意とする物理モデリング音源モジュールです。後述のAfter Later Audio AURISからのマニュアルトリガーで鳴らしています。
After Later Audio BEEHIVE
24種類の音源を持つ、大変便利なデジタル音源モジュールです。今回はその中でもコード音源を使用しています。
2HP Clk
モジュラーシンセには欠かせない「クロックジェネレーター」モジュールです。音が聞こえない(厳密には聞こえるらしいですが)メトロノームだと考えてください。ここからの出力をシーケンサーなどに入力してテンポ制御を行います。最近は単体機でもこのクロックを受信出来る機種が増えてきましたね(KORG volca、Roland AIRA Compactなど)。
Doepfer A-180-2V
マルチプル、つまり信号分配器です。入力されたひとつのクロック信号やCVを3つに分配して出力します。このセットでは2台使用しています。ちなみにこの機種は電源不要な「パッシブ・マルチプル」です。電源が必要なものは「バッファード・マルチプル」といいます。
2HP LFO v2
お馴染みLFOです。クロックとの同期が出来る他、異なる波形を同時に出力することが出来ます。今回はBEEHIVEのTimbre端子に入力して音色の変化を図ってみましたが、わかりにくかったかな。。。
2HP Rnd
今回のライブの主役「シーケンサー」です。とは言っても実際に出力しているのはやはりランダムCV/ランダムゲート信号です。ランダムCVはクロック同期しており、音程の変わるタイミングをクロックに合わせて、右のPico QUANTを通した上でBEEHIVEの音程入力(OCT/V)などに入力しています。ランダムゲート信号の方は別のモジュールに繋いでいます(後述)。
Erica Synths Pico QUANT
単体機しかご存じない方ならおそらく聞いたことがないであろう「CVクォンタイザー」モジュールです。クォンタイザーというとDAWによく装備されている機能ですが、あちらは音の鳴るタイミングを矯正するものなのに対し、このCVクォンタイザーは入力CVの音程を、スケール(ブルースとかペンタトニックのあれです)に従って矯正するものです。
2HP Div
クロックディバイダー/マルチプライヤーです。これは入力されたクロック信号を速くしたり遅くしたりするモジュールで、このセットではクロック信号を、右隣の2HP Arpを16分音符で鳴らすためのトリガーとして使うために速度を早めています。
2HP Arp
アルペジエーターモジュールです。どういう仕組みかというと、ルート音のCVを入力、またはツマミで設定した上でコードを指定すると、展開されたアルペジオのCVが入力されたトリガーのタイミングに従って出力されるというものです。出力CVは右隣のVCOに繋いでいます。
2HP VCO
その名の通り、アナログVCOです。FM変調やオシレーターシンク、PWMのための入力端子を備えていますが、今回はシンプルに単体で鳴らしています。
Erica Synths Pico LPG
ローパス・ゲートです。これも単体機しかご存じない方には聞きなれない言葉だと思いますが、要は「VCF+VCA+EG」だと思ってください。VCOをこれに通すことによって、アルペジオらしく鳴りを短くしている(=ディケイ・タイムを設定している)ほか、レゾナンスのような「ブチュブチュ」という効果を付けています。音が鳴る=ゲートが開くタイミングは、先ほどの2HP Divで速度を早めたクロック信号です。
2HP Seq
最大16ステップのCVシーケンサーです。トリガーが入力されるたびに1ステップ進みます。今回僕が採った方法は、2HP Rndからのランダムゲート信号をトリガーとして入力するということです。これによってシーケンサーの進み方が不安定になる効果を狙いました。右隣の2HP Bellを鳴らしています。
2HP Bell
こちらも鐘系の音が出る物理音源モジュールですが、nRingsと比べると小さめの鐘の音といった感じです。音程、タイミングとも、2HP Rndからの信号を使っています。
Erica Synths Pico DSP
デジタル・マルチエフェクターモジュールです。2HP Bellからの出力を直結し、ステレオ・ディレイを掛けています。
Noise Engineering Xer Dualis
4ch入力(ステレオ or モノラル)、ステレオ出力のミキサーモジュールです。各チャンネルにはミュートスイッチが付いています。
2HP Verb
ステレオリバーブモジュールです。マスター出力の前に入れることで、全体の出力の耳障りを良くしています。
Make Noise XOH
ステレオ2chミキサー+アッテネーター+ヘッドホン出力モジュールです。モジュラーシンセの出力信号は非常に大きいため、ラインレベルまで落とすにはアッテネーターと呼ばれるモジュールを使う必要があります。
では続いて、4ms POD48xに収められたエフェクトモジュールを、同じく左から順に解説していきましょう。
Noise Engineering Desmodus Versio
超ロングリバーブ・モジュールです。nRingsからの出力をこれに入力して「ドォーーーーン」という太鼓の音を鳴らしています。
2HP Slice
2HP Delay
Sliceは、一定時間にキャプチャしたフレーズを繰り返し再生するもので、スライスというよりはRoland SP-404SXなどの「DJFX LOOPER」に似たエフェクトです。右隣のDelayはシンプルなディレイです。2HP Playから出力されたインダストリアル・サンプルにこれらの効果を掛けています。
Michigan Synth Works TWIST
Endorphin.es GHOST
メイン音源であるBEEHIVEはこれらのエフェクトモジュールに繋いでいます。まずTWISTはクロスモジュレーション・モジュールです。そう、二つのオーディオ入力をぶつけてノイズのような効果をもたらす「X-MOD」です。TWIST自身がオシレーターを内蔵しているため、入力音はひとつでもクロス・モジュレーション効果が掛けられます。続いて大きなカットオフつまみが特徴のGHOSTですが、これはコンプレッサー、ディストーション、レゾナンス付きフィルター、リバーブがすべて同時に使えるマルチエフェクターです。ディレイ・タイムはクロック信号に同期します。
ALM Busy MFX
マルチエフェクターですが、同時に複数のエフェクトを使用することは出来ません。これもディレイ・タイムはクロック同期します。
2HP Brst
After Later Audio AURIS
「バースト」とはモジュラーシンセ用語で、「トリガーを連続出力する」ことだそうです。右隣のAURISはコンタクトマイクを内蔵したモジュールで、指でトントンと叩くとトリガーを発生します。このトリガーをBrstで増殖させた後、nRingsに送り、「太鼓をドドドドと叩く」効果を出しているというわけです。
さて長くなってしまいましたが、A Smooth Architect初めてのモジュラーシンセのみを使ったライブ、そして使用モジュールの解説はいかがでしたか。当日の演奏を聴いていただいた方からは「聴いたことのない音だ」「映画音楽のようだ」「現代音楽のようだ」という感想をいただいたのが何より嬉しかったです。
また、モジュール解説の方は、もしこれからモジュラーシンセを始めようという方がいらっしゃったら入門書のひとつとして、何かの参考になれば幸いです。
※モジュラーシンセの入門に関する記事としては、こちらのOno Keiichiro氏のものが最も読みやすく、かつポイントを押さえていると思います。
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